アルツハイマー病と、感じる力

アルツハイマー病への取り組みが、テレビで紹介されていた。
多分アメリカだったと思うが、その姿勢がユニークというか、
まあ、それが本当のような気もする。


喋ること、言語能力が失われていく、そして痴呆化しつつ亡くなる。
本人がそれを自覚しながら、症状が進行していくというのは悲惨だ。
ま、どんな病も悲しい過程を経るが、思考回路が徐々に失われていく、
というこの病気、本人だけでなく家族にとってもつらいものだ。



そのアルツハイマーの患者達に、ある医者の取った行動が、
一筆書きや、美術館巡りという美術へのアプローチであった。


「…患者の言語は失われる。しかし、一番底の感じる力は最後まで無くならない。」
というようなことを、その医者は言っていたと思う。


実際に名画に接したとき(一つはモネの作品だったな)、彼らは、
みな黙り込み、ジッと見つめていた。
その目は、その絵に吸い寄せられるように真剣な眼差しであった。


余計な喋り、どうでもよいような視線は見られない。


さすが名画なのである、患った人達の、これから更に深刻化する目と頭脳を、
スッと引きつけている。
感じ合うものが、それらを引き合わせているような場面であった。



患者と画家の双方が、そして誰もが持っているはずの感じるもので、
この医者は、アルツハイマー病という難病に向かっていた。